| 「なんだぁ?聞こえねぇよ」
 嘘だ。しっかり聞こえてる。聞こえないふりをして傍に寄せたいだけだ。逃げない様、腰を抱いて抱きしめた・・・もっとも逃げようとする怪力吸血鬼を止められるはずは無いが。
 
 「あの・・・あのですね・・・これ・・・ありがとう」
 
 こんな娘が何故ここにいるのか、何故吸血鬼なのか不思議で仕方ない。俺の様な奴が触っていい類の女じゃない。
 
 「あのな、嬢ちゃん。
 下心しか無い奴にあっさり礼なんか言うなよ。
 食われっちまうぞ」
 
 「え?何それ?」
 
 「・・・ちょっくら目ぇつぶってみな」
 「目?」
 
 ここで大人しく目を閉じてしまわれたら、かえって何も出来やしない。
 俺に対して警戒心が無いから目を閉じた。それは好きだとか嫌いだとかちっとも考えてやしねぇって事だ。
 
 「嬢ちゃん・・・下心が何だか知らないなんて言うなよ?」
 「だって隊長の言う事って、冗談なのか何なのか全然わからないです」
 
 「やっぱ目つぶってみ。
 こういうのは言葉だけじゃわかんねぇんだよ。
 ほら」
 
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